目次
スナックを経営している、またはこれから開業を考えている水商売経営者の皆様、以下のような悩みをお持ちではありませんか?
- 「スナックで接待行為をしても大丈夫?」
- 「どこからが接待に当たるのかわからない」
- 「深夜営業と接待は両立できる?」
スナック経営において、接待行為の基準を理解することは法的リスクを回避するために不可欠です。
適切な許可を取得せずに接待行為を行った場合、風営法違反として重い処罰を受ける可能性があります。
そこで本記事では、以下の内容について詳しく解説していきます。
- スナックでの接待行為に関する法的規制
- 接待行為の具体的な判断基準
- 深夜営業と接待許可の関係
- 法令遵守のための実践的対策
スナック経営における接待の基準を正しく理解して、安全で確実な店舗運営を行いましょう。
スナックでの接待行為は法的に問題ないのか?
結論から申し上げますと、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく風俗営業1号許可を取得していないスナックでは、接待行為を行うことは法律で禁止されています。
無許可で接待行為を行った場合、風営法違反として以下の処罰を受ける可能性があります。
- 刑事処罰:2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金
- 行政処分:営業停止命令
- 社会的影響:信用失墜による顧客離れ
営業停止処分を受けた場合、顧客離れによって廃業に追い込まれるケースも少なくありません。
自店舗が風俗営業1号許可を取得していない場合は、次項で説明する接待行為の基準を必ず確認してください。
また、風俗営業1号許可を取得している場合でも、営業時間などの規制があるため、詳細な法令遵守が必要です。
スナックの営業でどこからが接待行為に該当するのか?

風俗営業1号許可を取得していない店舗では接待行為が禁止されています。
ここでは、うっかり接待行為をしてしまわないよう、どこからが接待行為に当たるのかを確認していきましょう。
警察庁が発表している風営法の解釈運用基準には、接待行為の定義について以下のように記載されています。
接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」をいう。この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。
要約すると、「特定の客向けに飲食物の提供を超える会話やサービスを提供すること」が接待行為とされています。
具体的にどのような行為が接待と判断されるのか、解釈運用基準に記載されている6つの判断基準を見ていきましょう。
- 談笑・お酌等
- ショー等
- 歌唱等
- ダンス
- 遊戯等
- その他
それぞれ摘発の対象となる可能性がある厳しい基準なので、きちんと把握しておきましょう。
談笑・お酌等
特定少数の客の近くで談笑をしたり、酒等の飲食物を提供する行為は接待に当たります。
一方、お酌をしたり水割りを作ったりした後、速やかにその場を立ち去れば接待行為に当たりません。
また、飲食物提供の際に挨拶や世間話をする程度であれば、接待ではないと判断されます。
ショー等
特定少数の客に対して、個室等でショーや歌を提供することは接待に当たります。
ホテルのディナーショーのように不特定多数の客に対してであれば接待には当たりません。
歌唱等
特定少数の客の近くで歌うことを勧める、客の歌に手拍子をする、拍手、褒めはやす、デュエットは接待行為に当たります。
これに対して、客から離れた位置で、不特定の客に対して従業員やママ・マスターが歌うのであれば接待に当たりません。
ダンス
特定の客の相手となってダンスをする行為は接待に当たります。
ダンスが上手いママなどが、客にダンスを教える際は接待には当たりません。
遊戯等
特定少数の客と遊戯・ゲーム・競技を行うことは接待に当たります。
客一人・客同士の場合は接待に当たりません。
その他
客との身体の密着、手を握る等の接触、「あーん」行為は接待行為に当たります。
社交儀礼上の握手、酔客の介抱、客の荷物やコートを預かる行為は接待行為に当たりません。
スナックで接待と深夜営業は両立できるのか?

ここまで6つの接待基準を見ていただきましたが、厳しすぎると感じた方が多いのではないでしょうか。
この基準を守って営業するくらいなら風俗営業1号許可を取ろうと考えてしまいますが、現在深夜営業を行っているスナック、またはこれから深夜営業のスナックを開業しようと考えている経営者の方に重要な事実があります。
風俗営業1号許可とアルコールを提供しての深夜営業は法的に両立が不可能です。
深夜0時以降に酒類を提供するためには、営業開始前に深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出する必要があります。
しかし、深夜酒類提供飲食店として登録した場合、風俗営業1号許可を取得することはできません。そのため、スナックを開業する際はどちらか一方を選択しなくてはなりません。
それぞれのメリットとデメリットを紹介しますので、店舗のコンセプトに合った方を選びましょう。
深夜酒類提供飲食店として営業する場合
深夜酒類提供飲食店として営業する場合、営業時間に制限がないのが最大のメリットです。
ほとんどのスナックは深夜3時程度まで営業していますが、これは深夜酒類提供飲食店でないと実現できません。
- 深夜営業が可能(時間制限なし)
- 申請から営業開始までの期間が短い
- 許可取得費用が比較的安価
また、申請から営業開始までの期間が短いことも利点として挙げられます。
一方、接待行為ができないことが最大のデメリットです。
- 接待行為が一切禁止
- 常に摘発リスクがある
- 近隣からの苦情により発覚する可能性
法律上接待行為ができないため、常に捜査や摘発のリスクがあります。
例えば、近隣住民からカラオケの騒音等で苦情が入り、警察の立ち入りでデュエットを指摘される可能性もあるでしょう。
風俗営業1号許可を取得する場合
風俗営業1号許可を取得して営業する際は、接待行為が可能になることが最大のメリットです。
- 接待行為が合法的に可能
- 法律違反の心配がない
- 従業員の罪悪感やストレスがない
経営者も従業員も、法律違反を心配したり、違法行為の罪悪感に苛まれることがなくなります。
一方で、営業時間の制限が最大のデメリットとなるでしょう。
- 午前0時(一部地域では1時)までに営業終了
- 許可取得までに時間がかかる
- 各種制限や規制が厳しい
また、許可申請から許可取得まで時間がかかるため、開店が遅れたり、その分家賃を余分に支払うことになります。
スナックにはどちらの許可がおすすめか?
どちらの許可を選択するかは、店舗のコンセプトや売りにしたい要素によって決めることをおすすめします。
美味しい料理や居心地のいい空間をアピールしていきたいスナックには、深夜酒類提供飲食店として営業するといいでしょう。
- 深夜までゆっくり過ごせる環境を提供
- 居心地を求める新規顧客にアピール
- 飲食物のクオリティで差別化
12時で退店させられるスナックに、居心地の良さを感じてもらえるでしょうか。顧客は夜遅くまでゆっくりと過ごしたいと考えています。
一方で、愛想の良いキャストや魅力的なママを推していきたいスナックには、風俗営業1号許可を取ることをおすすめします。
- キャストとの接触やコミュニケーションが可能
- デュエットやお酌などのサービス提供
- 従業員の早期退勤というメリット
ママや女性スタッフを目当てに来る顧客に対して、おしぼりの手渡しやカラオケのデュエットができないとなれば、期待を裏切ることになります。
深夜営業ができないデメリットも、雇われるスタッフ側からは「早めに帰ることができる」というメリットに変わるでしょう。
スナックの接待で風営法に違反しないための対策

ここからは、スナックの接待で風営法違反をしないための具体的な対策を紹介していきます。
どれも普段から実施できるものなので、この記事を読んでからすぐに取り組んでみてください。
深夜酒類提供飲食店として営業する場合の対策
深夜酒類提供飲食店では接待行為が一切禁止されています。
オーナーやママはもちろん、スタッフを雇っている場合にはその全員に接待の基準を教育する必要があります。
- 全スタッフへの接待基準の徹底教育
- 営業中の定期的な監視と指導
- 違反行為を発見した際の即座の是正
特にスタッフは収入向上のために自分からデュエットを申し出ることもあるため、注意が必要。
また、営業中も時々スタッフの行動に目を配り、適切な指導を行う必要があります。
風俗営業1号許可を取得している場合の対策
風俗営業1号許可を取得した場合、接待行為については心配する必要がありません。
しかし、営業時間は午前0時までと厳格に定められています。
- 午前0時までの完全閉店の徹底
- ラストオーダー時間の適切な設定
- 時間管理の厳格な実施
これは0時にお客を全員帰さないといけないという意味なので、必然的にラストオーダーは23時〜23時半になります。
仮に0時を過ぎて営業しているのが発覚した場合、「従業員だけで飲んでいた」という言い訳は警察には通用しません。
風営法に違反しないためには、オーナー自身が閉店時間のルールを遵守させるよう徹底する必要があります。
経営者による適切な管理の重要性
許可の種類に関わらず、風営法に違反しないための対策の実施は経営者の責任です。
法律に関わることなので、スタッフに任せっきりにすることは危険です。
- 経営者自身による定期的な確認
- スタッフへの継続的な教育と指導
- 法令遵守の意識向上
日々の管理業務と並行して、法令遵守の確認も継続的に行うことが重要です。
スタッフとのコミュニケーションを密にし、法律に関する理解を深めてもらうよう努めましょう。
スナックの接待に関するよくある質問
最後に、スナックの接待に関してよく寄せられる質問とその回答をご紹介します。
①お客様との軽い会話も接待になりますか?
飲食物提供の際の挨拶や世間話程度であれば接待には当たりません。
ただし、特定の客の近くに長時間留まって談笑することは接待行為とみなされる可能性があります。
会話をする場合は、速やかにその場を離れることが重要です。
②カラオケで歌うこと自体は問題ありませんか?
従業員が客から離れた位置で、不特定の客に対して歌うことは接待に当たりません。
しかし、特定の客の近くで歌ったり、客とデュエットしたり、手拍子や拍手をすることは接待行為になります。
スナックにカラオケを導入する際のポイント!注意点や定番曲も解説
③風俗営業許可の取得にはどのくらい時間がかかりますか?
一般的には申請から許可取得まで1〜2か月程度かかります。
ただし、自治体や申請内容によって期間は異なるため、事前に管轄の公安委員会に確認することをおすすめします。
スナックの深夜営業に必要な許可って?2パターンの営業許可を比較
④深夜酒類提供飲食店の届出はすぐに営業開始できますか?
深夜酒類提供飲食店営業開始届は、一般的には届出から営業開始まで比較的短期間で可能です。
ただし、自治体によって手続きや期間が異なるため、詳細は管轄の保健所等に確認してください。
⑤違反が発覚した場合の処罰はどの程度ですか?
風営法違反の場合、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または両方が科せられる可能性があります。
また、営業停止命令も同時に出されるため、事業継続が困難になる場合があります。
⑥どちらの許可を選ぶべきか迷っています
店舗のコンセプトや顧客層を明確にしてから選択することをおすすめします。
接客重視なら風俗営業許可、深夜営業重視なら深夜酒類提供飲食店届出を検討してください。専門家への相談も有効です。
法律・税務のコンプライアンスでお悩みの方へ
水商売経営において、法律・税務のコンプライアンスは経営の根幹です。
適切な法律・税務対応を行うことで、摘発リスクの回避、罰金や営業停止の防止、税務調査への備え、そして長期的に安定した経営基盤の構築が可能になるでしょう。
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まとめ:スナック経営者は接待基準を理解して適切な許可を取得しよう
今回は、スナックの接待について詳しく解説しました。
接待の基準・線引きを正確に理解し、店舗のコンセプトに合った許可を申請することで、法的リスクを回避した安全な経営が可能になります。
もし現時点で法に触れるような接待行為を行っている可能性がある場合は、即座にスタッフへの教育を実施し、適切な許可の取得を検討してください。
この記事を参考に、風営法を遵守した安全で持続可能なスナック経営を実現しましょう。
この記事が、あなたのスナック経営成功の一助となれば幸いです。














