目次
本記事をご覧の方は、以下のような疑問をお持ちではありませんか?
- スナックを開業するにあたってどんな営業許可を取ればいい?
- 深夜に営業したい場合必要な許可はなに?
- 風俗営業許可と深夜営業許可の違いがよくわからない
スナックを営業するためには適切な営業許可の取得が法律で義務づけられています。しかし、営業許可には複数の種類があり、どのようにスナックを営業するかによって必要な許可は大きく異なります。
間違った許可を取得したり、無許可で営業したりすると、最大2年以下の懲役と200万円以下の罰金という重い処罰を受ける可能性があります。
本記事では、スナック経営者・開業予定者の皆様に向けて、営業許可の選択と取得方法について詳しく解説します。
- スナックの営業許可2パターンの特徴と違い
- どちらの許可を選ぶべきかの判断基準
- それぞれの許可取得に必要な手続きと注意点
適切な営業許可を取得して、安心・安全なスナック経営を実現するために、ぜひ最後までご覧ください。
スナックの営業許可は主に2パターンから選択
スナックを営業する際に取得する主要な営業許可は、以下の2つです。
- 風俗営業許可(1号営業)
- 深夜酒類提供飲食店営業許可
重要なのは、法律上この2つの許可を同時に取得することは不可能であり、どちらか一方を選択する必要があるということです。
どちらの許可を選択するかによって、スナックの営業スタイル、営業時間、提供できるサービス内容が根本的に変わってきます。
【風俗営業許可】接待を伴う接客が可能な営業形態
風俗営業許可とは、「接待を伴う接客」を合法的に行うために必要な許可です。
風俗営業許可で可能になる接客サービス
風俗営業許可を取得することで、以下のような接待行為が合法的に行えるようになります。
- お客様の近くに座り、談笑や会話を楽しむ
- カラオケのデュエットや手拍子による盛り上げ
- カードゲームやボードゲームなどの娯楽を一緒に楽しむ
- お酌やタバコの火つけなどの細やかなサービス
- 特定のお客様に対する特別な気配りや世話
これらの「接待」は、スナックの魅力を最大限に活かすサービスであり、ホステスの接客スキルを武器にした営業が可能になります。
風俗営業許可の制約事項
一方で、風俗営業許可には重要な制約があります。
最も大きな制約は、深夜0時以降の営業が一切禁止されていることです。
この制約により、営業可能時間は基本的に夕方から深夜0時までに限定されます。地域によっては午後8時から営業開始となる場合もあり、営業時間の短さが経営上の課題となる可能性があります。
【深夜酒類提供飲食店営業許可】深夜営業が可能な営業形態
深夜酒類提供飲食店営業許可とは、「深夜0時以降の営業」を行うために必要な許可です。
深夜営業許可で可能になるサービス
深夜営業許可を取得することで、以下のようなサービス提供が可能になります。
- 深夜0時から早朝6時まで営業を継続できる
- カウンター越しでの世間話や雑談
- お客様から距離を保った状態でのカラオケ手拍子
- 社交辞令程度の握手や飲食物の配膳
- ゲームや娯楽を離れた場所から見守る
深夜営業の最大のメリットは、長時間営業により少数の固定客との深い関係性を築けることです。
深夜営業許可の制約事項
深夜営業許可の場合、風俗営業法で定義される「接待」は一切禁止されています。
お客様の隣に座って長時間話し込む、特定のお客様だけに特別なサービスを提供するなどの行為は違法となります。
この制約により、ホステスの接客スキルを直接的に活かすことは難しくなり、料理の質や店の雰囲気、ママの人柄など、接待以外の要素で勝負する必要があります。
チェックリストに従って開業までのスケジュールを立てる
水商売の開業時にはやらなければならない作業がたくさんあります。その全てを紙に書き出すことは、開業の経験者でも難しいことです。
- 開業までに何を行えばいいのか
- 業者選定の優先順位は?
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2つの営業許可を同時取得できない法的理由
多くの経営者が「接待もできて深夜営業もできる」理想的な営業形態を望みますが、法律上これは絶対に不可能です。
法的制約の根拠
2つの許可を同時取得できない理由は明確に法律で定められています。
- 風俗営業許可のもとでは深夜0時以降の営業は違法行為
- 深夜営業許可のもとでは接待を伴う接客は違法行為
- どちらか一方の許可に違反すると無許可営業として処罰対象
「接待を伴う接客を行いたいなら深夜0時以降は営業してはいけない」「深夜0時以降営業したいなら接待を伴う接客をしてはいけない」という鉄則があります。
違法営業のリスクと実際の処罰事例
近年、規制が厳しくなっており、無許可で接待を伴う接客を行ったとしてスナックのママが逮捕された実例も報告されています。
実際の処罰事例では、21日間の拘留と50万円の罰金が課されており、最大で2年以下の懲役と200万円以下の罰金という重い処罰が待っています。
「バレなければ大丈夫」という考えは非常に危険で、私服警官による巡回も行われているため、必ずどちらかの許可のルールに従って営業することが重要です。
どちらの許可を選ぶべきか?経営戦略別の判断基準
最も重要な判断となる「どちらの許可を選ぶべきか」について、具体的な基準をご紹介します。
まずは、それぞれの許可についての特徴をまとめた表をご覧ください。
項目 | 風俗営業許可 | 深夜営業許可 |
---|---|---|
可能な営業 | 接待を伴う接客 | 深夜0時以降の営業 |
営業時間 | 〜深夜0時まで | 深夜6時まで可能 |
主な強み | ホステスの接客力活用 | 長時間営業による固定客化 |
適合エリア | 都心部・人口密集地 | 郊外・地方都市 |
スタッフ数 | 複数名体制 | 少数精鋭 |
風俗営業許可を選ぶべきスナック
この表組を踏まえ、以下の条件に該当する場合は、風俗営業許可の取得をおすすめします。
- 接客スキルの高いホステスを雇用予定・既に在籍している
- 都心部や繁華街など、早い時間帯でも集客が見込めるエリア
- 複数のホステスを雇用し、接客を売りにした営業を予定
- 会社員や早い時間帯の顧客層をターゲットにしている
風俗営業許可の場合、ホステスの魅力を最大限に活かした営業が可能です。ただし、営業時間の制約があるため、19時〜0時の時間帯で効率的に売上を作る戦略が必要となります。
深夜営業許可を選ぶべきスナック
以下の条件に該当する場合は、深夜営業許可の取得をおすすめします。
- 料理の質やママのトーク力など、接待以外の強みがある
- 郊外や地方都市など、深夜需要が見込めるエリア
- ママ1人または少数スタッフでの営業を予定
- 夜勤労働者や深夜利用の顧客層をターゲットにしている
深夜営業許可の場合、長時間営業により少数の固定客との深い関係性を築くことが可能です。接待はできませんが、「雰囲気の良さ」「料理の美味しさ」「落ち着ける空間」などで差別化を図ります。
スナックの営業許可取得に必要な要件と手続き
どちらの許可を選択するかが決まったら、実際の取得手続きに進みます。許可取得には厳格な要件があり、事前の確認が重要です。
営業許可を取得するためには、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
①場所的要件
スナックの営業許可を取得するためには、適切な用途地域内での出店が必須条件です。
スナックが営業できる用途地域は法律で厳格に定められており、以下のエリアに限定されています。
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
住宅地域や文教地区では営業許可を取得することができないため、物件選択時には必ず用途地域証明書で確認しましょう。
また、半径100メートル以内に以下の保護対象施設がないことが条件となります。
- 学校(小学校・中学校・高等学校・大学等)
- 病院・診療所
- 図書館
- 児童福祉施設
- 公民館・青少年施設
物件契約前に、必ず現地調査と役所での事前確認を行い、営業許可取得の可否を確認することが重要です。
②設備的要件
営業許可を取得するためには、店舗の構造や設備が法律で定められた基準を満たしている必要があります。
客室の床面積については、以下の基準が設けられています。
- 和室:9.5平方メートル以上(1室あたり)
- 洋室:16.5平方メートル以上(1室あたり)
- 客室が1室のみの場合:面積制限なし
また、店舗の構造や設備については、以下の詳細な基準をすべて満たす必要があります。
- 外部から客室が見えない構造であること
- 客室に見通しを妨げる設備(ついたて等)を設置しないこと
- 客室の出入り口に施錠設備を設けないこと
- 照明の照度が5ルクス以下とならない構造・設備
- 騒音・振動が基準値以下となる構造・設備
- 善良な風俗を害する写真・ポスター等を設置しないこと
- ダンス場を設置しないこと
設備要件は非常に細かく規定されているため、風営法に詳しい施工業者に依頼することを強く推奨します。
③人物的要件
営業許可を取得するためには、店舗の管理者(個人の場合は本人、法人の場合は役員全員)が法律で定められた欠格事由に該当しないことが必要です。
以下のいずれかに該当する場合は、営業許可を取得することができません。
- 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない者
- 1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、5年を経過しない者
- 集団的・常習的に暴力的不法行為等を行う恐れのある者
- アルコール、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤の中毒者
- 風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
- 営業停止命令に違反して許可を取り消された者で5年を経過しない者
- 暴力団員またはその関係者
また、人物的要件の確認のため、以下の書類の提出が必要となります。
- 住民票(本籍記載のもの)
- 身分証明書(市区町村発行)
- 登記事項証明書(成年被後見人等の登記がないことの証明)
- 誓約書(欠格事由に該当しない旨)
法人の場合は役員全員が対象となるため、役員変更時には改めて人物的要件の確認が必要です。
食品営業許可も忘れずに取得
営業許可とは別に、スナックでは食品営業許可の取得も必須です。
お酒や軽食を提供する以上、食品を扱う営業として保健所への届出と許可取得が法律で義務づけられています。
食品営業許可に必要な資格
食品営業許可を取得するためには、食品衛生責任者を1店舗につき1人配置することが必要です。
調理師や栄養士の資格がない場合は、各自治体の食品衛生協会が実施する約6時間の講習会に参加することで資格を取得できます。
その他の必要な許可・届出
店舗規模によっては、以下の追加対応も必要になります。
- 防火管理者の配置(収容人数30人以上の場合)
- 建築基準法に基づく用途変更確認申請
- 消防署への防火対象物使用開始届出
合わせてしっかり取得しておきましょう。
スナックの営業許可取得の具体的な手続きと必要書類
それぞれの許可取得に必要な具体的な手続きをご紹介します。
風俗営業許可の申請手続き
風俗営業許可は管轄の警察署に申請します。主な必要書類は以下の通りです。
- 許可申請書
- 営業の方法を記載した書類
- 営業所の使用権原を証明する書類(賃貸契約書・登記事項証明書等)
- 営業所の平面図及び周囲の略図
- 住民票(本籍記載)・身分証明書・登記事項証明書
- 管理者の誓約書・写真
申請から許可までは通常1〜2ヶ月程度を要します。
深夜営業許可の申請手続き
深夜営業許可も管轄の警察署に届出を行います。主な必要書類は以下の通りです。
- 深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
- 営業の方法を記載した書類
- 飲食店営業許可証の写し
- 店舗の平面図・営業所求積図
- 賃貸契約書・使用承諾書
- 用途地域証明書
- メニュー表
深夜営業許可は「届出制」のため、適切に書類を提出すれば比較的早期に営業開始が可能です。
営業許可に関するよくある質問(スナック経営者向け)
スナックの営業許可に関して、経営者の皆様からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 風俗営業許可と深夜営業許可、どちらが取得しやすいですか?
A. 一般的に深夜営業許可の方が取得しやすいとされています。
深夜営業許可は「届出制」のため、必要書類が揃えば比較的スムーズに手続きが完了します。
一方、風俗営業許可は「許可制」で審査が厳格なため、設備要件や人物要件の確認に時間がかかり、申請から許可まで1〜2ヶ月程度を要します。
Q. 営業許可を取得した後に、もう一方の許可に変更することは可能ですか?
A. 可能ですが、一度許可を返納してから新たに申請し直す必要があります。
営業スタイルの変更に伴い許可を変更する場合は、現在の許可を返納し、新しい許可の要件を満たした上で再申請することになります。この間は営業を停止する必要があるため、慎重な検討が必要です。
Q. 接待の定義が曖昧でよくわからないのですが、具体的な基準はありますか?
A. 「特定少数のお客様に対する特別なサービス」が接待の基本的な定義です。
お客様の隣に座って長時間会話する、特定のお客様とだけカラオケを歌う、お酌やタバコの火つけなどが代表的な接待行為です。
判断が難しい場合は、管轄の警察署に事前相談することをおすすめします。
Q. 無許可営業が発覚した場合の処罰はどの程度重いのですか?
A. 最大で2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。
実際の処罰事例では、21日間の拘留と50万円の罰金が課されたケースがあります。また、行政処分として営業停止命令が出される可能性もあり、経営に致命的な打撃となります。
Q. 営業許可の申請は自分で行うべきか、専門家に依頼すべきか悩んでいます
A. 申請書類が複雑で、不備があると再提出が必要になるため、行政書士への依頼を推奨します。
特に風俗営業許可は要件が厳格で、設備図面や法的書類の作成に専門知識が必要です。
コストはかかりますが、確実な許可取得と時間短縮を考えると、専門家への依頼が安心です。
Q. 営業許可取得後の更新手続きはありますか?
A. 風俗営業許可は定期的な更新が必要ですが、深夜営業許可に更新手続きはありません。
風俗営業許可は自治体によって異なりますが、3〜5年ごとの更新が一般的です。一方、深夜営業許可は一度届出を行えば、営業内容に変更がない限り追加手続きは不要です。
まとめ
スナックの営業許可選択は、経営戦略そのものを決定する重要な判断です。
適切な許可を取得することで、法的リスクを回避しながら理想の営業スタイルを実現できます。
- 風俗営業許可と深夜営業許可は同時取得不可能
- 店舗コンセプトとターゲット客層に応じて選択する
- 無許可営業は重い処罰の対象となるため絶対に避ける
- 食品営業許可など関連許可も忘れずに取得する
どちらの許可を選択するかでスナックの未来が決まると言っても過言ではありません。
自店舗のコンセプトを明確にし、最適な営業許可を取得して成功するスナック経営を実現しましょう。