目次
本記事をご覧の方は、以下の疑問をお持ちではありませんか?
- ホストクラブでの売掛金はどうやって回収すればいい?
- 法的に売掛金を回収できないケースは?
ホストクラブでの多くのトラブルの元にもなる「売掛」。
お店側としてもトラブルはできるだけ避けたいものですし、回収できない事態に陥り、不要な手間はかけたく無いというのが本音では無いでしょうか。
そこで本記事では、以下の内容を解説します。
- ホストクラブの売掛金とは?
- ホストの売掛金の回収方法
- ホストクラブの売掛金に関する注意点
売掛金を速やかに回収したいホストや店舗は、ぜひ参考にしてみてください。
ホストの売掛金とは?
売掛金とは、商品やサービスを提供したにもかかわらず、代金を受け取っていない未回収の債権を指します。
ホストクラブにおける売掛金は、来店客が会計期限内に支払いを済ませなかった、以下を一定期間内に回収する権利のことです。
ホストクラブでの売掛金の例としては、以下が挙げられるでしょう。
- 指名料
- ドリンク代
- 高価なボトル代など
細かいシステムはお店によって異なりますが、基本的に売掛をしているお客さんは、月末までにその金額を返すように定められているところがほとんどです。
なお、発生日から消滅時効(原則として5年)が適用されるため、未回収リスクを軽減するためには発生日と回収予定日の管理が重要。
回収できなかった売掛金は給与から天引きされる
売掛の方法としては、以下の2パターンがあります。
- お店側が立て替えるパターン:
踏み倒すお客様が多く、損失となるため、現在は主流でない - 担当ホストが立て替えるパターン
「推し」が立て替えてくれた方が返済率が高いため、主流
この内、現在は担当ホスト自身が売掛金を立て替える形が多いです。
が、ホストの中には「売掛は絶対にしない」と決めている人もいます。
というのも、売掛を回収できなかった場合のお店の対応としては、給与から売掛金の未回収分を天引きするとしているところがほとんどであるためです。
「お客さんを管理することもホストの仕事のうち」という考え方があり、元は自分のために使ってくれたお金ですから、回収できなければ自分自身で尻拭いをしなければならないのは、当然かもしれませんね。
ホストの売掛金の回収方法
ホストクラブでの売掛金を回収するための方法は、以下4つが挙げられます。
- 内容証明郵便を送る
- 直接回収を行う
- 債権回収代行を依頼する
- 訴訟を起こす
それぞれ解説していきます。
①内容証明郵便を送る
請求しても支払いに応じないお客様には、内容証明郵便を送って支払いの催促を行う方法が有効です。
通常の郵便では証拠としては残りませんが、内容証明郵便であれば、のちに裁判にまで発展した場合にも公的に日付を証明できるので、支払い請求の証拠としても提示することが可能です。
もしそれでも相手が支払いに応じないのであれば、簡易裁判所に支払い督促の申し立てを行なったり、少額訴訟をするなどの措置を取る必要もあるでしょう。
②直接回収を行う
コンタクトが取れる顧客であれば、直接会って支払意思を確認しながら、再度契約内容やリマインドを行いましょう。
対面ですので説得力が高く、心理的なプレッシャーを与えやすい手法です。
ただし、恐喝や住居侵入などによる、強制的な回収は犯罪となるので、避けましょう。
③債権回収代行を依頼する
債権回収のプロに委託することで、高い回収率を狙えます。
具体的には、弁護士や認定司法書士が挙げられるでしょう。
これ以外の、資格がない業者に代行を任せると、違法行為となるため注意が必要です。
④訴訟を起こす
売掛金の存在が認められれば、お客様を訴え、裁判を起こすのも手です。
また、前述の支払督促に対して、お客様が異議申し立てを行った場合も裁判となります。
ホスト側の主張が認められる判決が出れば、お客様は強制的に売掛金の支払いに応じる必要があります。
ホスト売掛金の管理方法
続いて、ホストや店舗向けに、売掛金を管理する方法を2つご紹介します。
- 借用書を作成する
- 管理台帳を作成する
それぞれ確認していきましょう。
①借用書を作成する
「借用書」とは、お金を借りる人が「私は、〇〇から〇〇円を借りています」ということを書面に記したものです。
この借用書は、返済が滞った時に「お金の貸し借りがあった」という証拠品になります。
借用書に記載しなければならない項目としては、下記のようなものが挙げられるでしょう。
- 表題・タイトル(借用証、金銭消費貸借契約書など)
- 宛名
- 金額
- 事実の認定(借りたという事実を明記する)
- 利息(双方の合意があれば無利息でも可)
- 支払方法、返済方法
- 返済期限
- 日付
- 借主(借主の住所、氏名および捺印欄)
- 連帯保証人(連帯保証人の住所、氏名および捺印欄)
これに印紙、収入印紙を貼ることで、借用書としての効力が発生します。
②管理台帳を作成する
エクセル等を用いて、売掛金の管理台帳を作成する方法もあります。
管理する内容としては、以下が挙げられるでしょう。
- すべての顧客情報
- 顧客ごとの支払いの締め日
- 顧客ごとの担当ホスト
- 顧客ごとの売掛金額
エクセル等で表を作成して一覧で管理することで、売掛金の消滅時効前に行動できたり、締め日に合わせた対策が取れたりします。
また、売掛金については、どんな小さな金額でも記録しましょう。
後々、チリツモで金額が把握しきれなくなる可能性もあります。
ホストクラブの売掛に関する注意点
ここからは、ホストクラブの売掛金に関する注意点を解説します。
①返済義務がないケースがある
売掛金は原則として代金未払いに対する債権ですが、以下のような場合には法的な返済義務が認められないケースがあります。
- 相手が18歳未満
民法第5条:未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない - 詐欺または脅迫による売掛金
民法第96条:詐欺または強迫による意思表示は取り消すことができる - 売掛をした証拠がない
客側が「支払っていない」と言ったら逃げられてしまう体制はNG - 恋愛感情に乗じた売掛金
いくつかの条件が揃うと「恋愛感情に乗じた契約」とみなされる
これらのケースは争点となることがあり、法的に回収が困難になることもあります。
必ず利用契約書や利用規約を交わし、領収書や明細をきちんと発行しておきましょう。
②消滅時効の期限がある
全ての金銭債権には「消滅時効」が適用され、請求や催促を行わないまま放置すると、法的に回収権が消滅します。
時効は、以下の方法で中断または更新させることができます。
中断措置を取らないと、請求権は消滅して法的回収手段が使えなくなるため、注意が必要です。
- 債務者による支払承認(書面・口頭いずれも可)
- 裁判上の請求(支払督促や訴訟の提起)
- 差押えなどの強制執行手続き
③お客様への無理な営業は避ける
ホストクラブにおける未収の多くは、お客さんからしているものではなくホスト側から提案しているものです。
ホストクラブは、いわば男同士の戦場。
「あと売上が○○万円あがればナンバーに入れるのに…!」という状態でヤキモキしているホストも少なくなりません。
お客さんに対して売掛を提案し、高いお酒を注文してもらい、売り上げをアップさせるという手段をとるホストも多いです。
お店側の対応としては、無理な売掛を発生させないよう、ホスト自身を指導する必要があると言えるでしょう。
よくある質問(ホストクラブ経営者向けQ&A)
Q. 売掛金を回収する一番現実的な方法は?
A. まずは内容証明郵便を用いた催告が基本です。
それでも支払いがない場合は、簡易裁判所での支払督促や少額訴訟を検討しましょう。
初動が遅れると時効リスクもあるため、証拠を揃えたうえで速やかに行動することが重要です。
Q. 法的に売掛金を回収できないケースにはどんな例がありますか?
A. 以下のようなケースでは、売掛金の法的回収が困難です。
- 相手が18歳未満(未成年契約)
- 恋愛感情に乗じた売掛とみなされた場合
- 詐欺的な契約手法があった場合
- 証拠が残っていない場合
このようなケースに備え、利用規約・契約書・領収書の整備が欠かせません。
Q. ホストが立て替えた売掛金を給与から天引きしても問題ない?
A. 原則として書面で同意を得ていることが条件です。
雇用契約や委託契約で「売掛未回収時は給与天引き」と明示し、本人から同意を取っていれば合法とされやすいですが、過度な天引きや強制は労基法違反に問われるリスクもあるため注意が必要です。
Q. 売掛の証拠として最も有効な書類は何ですか?
A. 最も有効なのは署名・押印付きの借用書や利用契約書です。
口約束やLINEのやりとりだけでは証拠力が弱く、裁判で不利になる可能性があります。
金額の大きな売掛には、明文化された書面(借用書+連帯保証人付き)が鉄則です。
Q. 売掛を発生させないための店舗側の対策は?
A. 店舗としては以下の3点が有効です。
- 無理な営業・売掛をホストが行わないよう教育する
- 売掛金の管理ルール(台帳・締日・限度額)を徹底する
- 高額売掛は必ず書面で同意・記録を残す
「売ること」より「返済できること」を優先する文化を店舗全体で共有することがリスク管理につながります。