目次
ホストクラブを開業・経営する中で、以下のような不安を抱くことはありませんか?
- ホストの風営法は何がアウトで何がセーフかわからない
- 自分のお店は風営法違反していないか時々不安になる
- 2025年の改正風営法で何が変わったのか知りたい
そこで本記事では、ホスト経営における風営法について、最新の改正内容を踏まえて以下の内容を紹介していきます。
- 2025年改正風営法の重要な変更点
- ホストクラブの「風俗営業」のルール
- ホストクラブで風営法違反した場合の罰則
- ホストクラブで風営法違反になりやすい具体的ケース
読後は最新の風営法について理解が深まるはずですので、ホストクラブ経営者の方はぜひ参考にしてみてください。
【2025年改正】ホストクラブの風営法の重要な変更点
2025年6月28日から施行された改正風営法は、戦後最大級の規制強化と言われています。ホストクラブを含む接待飲食営業に大きな影響を与える主要な変更点は以下の通りです。
- 色恋営業(本営)の規制強化
- 無許可営業の罰則大幅強化
- 客への威迫による売春等要求の禁止
- 不適格者排除の強化
色恋営業(本営)の規制
新設された第18条の3により、恋愛感情を利用した営業手法が明確に規制対象となりました。
- 料金の虚偽説明の禁止
- 客の恋愛感情につけ込んだ飲食誘導の禁止
- 客が注文していない飲食物提供の禁止
違反した場合は、営業停止処分や許可取り消しなどの行政処分が科される可能性があります。
無許可営業の罰則大幅強化
無許可営業に対する罰則が劇的に強化されました。
改正後:5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金
法人の場合:最大3億円の罰金
ホストクラブの「風俗営業」のルール
ホストクラブは風営法において「風俗営業」にあたります。まずは風俗営業を行う上で押さえておくべき、基本的なルールを見ていきましょう。
- 営業時間の遵守
- 構造、設備の維持
- 外国人の雇用
- 従業員名簿
- 許可証の提示
営業時間の遵守
風俗営業許可を貰って風俗営業を行う場合、原則として午前0時から午前6時までの間は営業することができません。
「午前1時〜午前6時が営業できない」など地域によるバラツキはありますが、風営法では営業時間の遵守が必須です。
構造、設備の維持
風俗営業を行う場合、構造や設備も決められた規格を守る必要があります。
具体的には以下が挙げられます。
- 客室面積の広さ制限
- 店内の明るさ制限
こちらも地域差がありますが、決められた構造・設備制限は維持するようにしましょう。
※最新の風営法に関する公式情報は警察庁の国会提出法案および神奈川県警察の改正風営法情報をご確認ください。
外国人の雇用
風俗営業の場合、雇用してよい外国人は以下に該当する方のみです。
- 特別永住者
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
上記に該当していない外国人を雇用した場合は「不法就労助長罪」に該当し、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金(※2025年6月から5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に厳罰化)が科せられる可能性があります。
仮に外国人を雇用する際には、従業員名簿に確認資料となるパスポートのコピー、外国人登録証明書のコピーを必ず控えるようにしましょう。ビザの有効期限にも注意が必要です。
詳しくは厚生労働省の外国人雇用ガイドラインを参照してください。
従業員名簿
風俗営業の管理者は、お店のスタッフ全員の従業員名簿の作成・管理をしなくてはいけません。
従業員名簿に関して、以下のどれかに該当していると罰則を受けることとなります。
- 従業者名簿をお店に置いていない
- 必要な記載をしていない
- 虚偽の記載をした
罰則の内容は厳しく、10日以上80日以下の営業停止(基準期間20日)処分、100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
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許可証の提示
風俗営業を行う場合、風俗営業の許可証を営業所内の見えやすい場所に掲示する必要があります。
この際、コピーではなく原本を掲示しなくてはならないため、紛失した場合などは再交付されるまで営業はできません。
警察官や行政が立ち入った場合にチェックされるポイントですので、必ず店内の見えやすい場所に原本を掲示しましょう。注意を受けても許可証を掲示しない場合、営業停止処分が下されるケースがあります。
ホストクラブで風営法違反した場合の罰則
風営法に関する基本的なルールを見てきましたが、風営法違反してしまった場合どのような罰則が科されるのでしょうか?
結論から言うと、風営法違反の罰則は主に以下2つに分類できます。
- 刑事処分
- 行政処分
それぞれ解説していきますので、どちらの処分も受けることないよう、注意してください。
風営法の刑事処分
刑事処分とは、刑事事件として逮捕、起訴されて有罪が確定した場合に、「拘禁刑・罰金」などが科される罰則のことです。
実際の事例では「罰金」に関する処分が多く、具体的な罰則と違反内容としては以下が挙げられます。
『5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金またはこれの併科』の違反行為(※2025年改正で大幅強化)
- 無許可営業
- 不正な手段で許可を取得
- 名義貸し
- 営業停止の命令に違反した営業
- 禁止されている場所での営業など
『1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金またはこれの併科』の違反行為
- 構造または設備を承認を受けずに変更した
- 18歳未満の者に客の接待をさせた
- 午後10時から午前6時までの間に、18歳未満の者を客に接する業務をさせた
- 18歳未満の者を客として立ち入らせた
- 20歳未満の者に酒類、たばこを提供したなど
『6か月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金またはこれの併科』の違反行為(※新設)
- 客引き行為をした
- 客引きのために立ちふさがったり、つきまとう行為をした
- 威迫により売春等への要求・勧誘をした(改正で新設)
これらは風営法の刑事処分の中でも特に重い罰則ですので、違反にならないよう注意しましょう。
風営法の行政処分
続いて行政処分ですが、こちらは警察の調査後に公安委員会が処分内容を決定し、「許可の取り消し・営業停止・指示処分」などが科される処分のことです。
まず「指示処分」だけ下されるケースもあれば、一発で営業停止・許可取り消しが行われるケースなど様々。具体的には以下のように定められています。
『許可取り消し』になる違反行為
- 構造または設備を承認を受けずに変更した
- 不正な手段で構造または設備変更の承認を受けた
- 名義貸し
- 18歳未満の者に客の接待をさせた
- 午後10時から午前6時までの間に、18歳未満の者を客に接する業務をさせた
- 色恋営業の遵守事項違反(改正で追加)
『営業停止』の違反行為
- 不正な手段で許可を取得
- 客引き行為をした
- 客引きのために立ちふさがったり、つきまとう行為をした
- 18歳未満の者を客として立ち入らせた
- 20歳未満の者に酒類、たばこを提供した
『指示処分』の違反行為
- 許可証を営業所内の見やすい場所に掲示していない
- 相続、法人の合併・分割承継を受けたが、許可証の書換えをしていない
- 変更事項に関する届出をしなかった
- 営業していない状況なのに風俗営業などの許可証や認定証を返納しなかった
- 料金表などを壁やドアなど見やすい場所に掲示していなかった
指示処分だけで済むならまだいいものの、一発で営業停止・許可取り消しの処分を受けるのは大変苦しいです。また、違反内容によっては刑事処分もあわせて受けるケースもあります。
ホストクラブで風営法違反になりやすい具体的ケース
ホストクラブで風営法違反した際の大まかな罰則について確認してきました。最後は「ホストクラブが風営法違反になる具体的なケース」を紹介していきます。
- 無許可で営業を行った
- 色恋営業(本営)を行った
- 適切でない従業員を雇用した
- 18歳未満のお客さんを入店させた
- 届け出を出さずに店舗の構造を変更した
無許可で営業を行った
ホストクラブを無許可で営業するのは、当然に風営法違反です。
改正後の無許可営業は『5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金またはこれの併科』の違反行為に該当し、法人の場合は最大3億円の罰金となります。
また、許可証を得たとしても、それが他人名義で得た許可証であればこれも風営法違反。実際に他人名義でキャバクラを経営したことで、懲役6ヶ月(執行猶予3年)、罰金100万円が科された事例があります。
ちゃんとご自身の名義で許可を取得し、営業を行なうようにしましょう。詳しくは警察庁の風営法関連申請手続きをご確認ください。
色恋営業(本営)を行った
2025年改正風営法の目玉である色恋営業規制。以下のような営業手法が明確に禁止されました。
- 料金の虚偽説明(「君だけ特別価格」など)
- 恋愛感情を利用した飲食誘導
- 客が注文していない飲食物の提供
違反すると営業停止や許可取り消しなどの重い行政処分が科される可能性があります。従来のグレーゾーンだった営業手法が明確に規制されたため、注意が必要です。
適切でない従業員を雇用した
ホストクラブは風俗営業ですので、以下のような方を雇用し、接待させるのは違反です。
- 18歳未満のスタッフ
- 「特別永住者」等でない外国人スタッフ
これは刑事処分の「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金またはこれの併科」と、行政処分の「許可取り消し」双方に該当します。
実際のケースで言うと、15歳の少女をキャバクラで働かせたとして、経営者2人を風俗営業法違反(年少者雇用)の疑いで追送検した事例があります。
雇用する際は、しっかり身元確認・各種証明書のチェックを行うようにしましょう。詳細は警視庁の外国人適正雇用ガイドも参考にしてください。
18歳未満のお客さんを入店させた
18歳未満の方を、お客さんとしてホストクラブへ入店させるのもNGです。
これは『1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金またはこれの併科』および、「営業停止」の処分を受けることとなります。
お客さんの年齢確認は必ず行うようにしましょう。
届け出を出さずに店舗の構造を変更した
最後に、届け出を出さず、無許可で店舗の構造を変更することも風営法違反となります。
加えて、以下のように制限を破った店舗構造にすることも当然違反です。
- 照度を決められた規格以上にする
- 床面積や壁面積を決められた規格以上にする
こちらは『1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金またはこれの併科』および、「許可取り消し」に該当する違反行為となります。
店舗の構造を変更する場合は届け出を出すのはもちろん、内装業者などの専門家にも、違反にならないか相談しつつ改装を行ないましょう。
ホストクラブの風営法に関するよくある質問(Q&A)
ホストクラブの風営法遵守について、よくある質問をまとめました。
Q1. 2025年改正風営法で最も注意すべき点は何ですか?
A. 色恋営業の規制と無許可営業の罰則強化が最重要です。
特に恋愛感情を利用した営業手法が明確に規制されたため、従来のグレーゾーンだった営業が違反となる可能性があります。また、無許可営業の罰金が個人で最大1,000万円、法人で最大3億円まで引き上げられました。「知らなかった」では済まされない厳しい時代に入ったと考えてください。
Q2. 色恋営業とはどこまでが規制対象になりますか?
A. 恋愛感情を利用して不当な利益を得る行為が規制対象です。
- 料金の虚偽説明:「君だけ特別価格」など虚偽の料金を伝える行為
- 恋愛感情を利用した圧迫:「会ってくれないと別れる」などの発言
- 無断でのドリンク提供:客が注文する前にシャンパンコールを始めるなど
ただし、恋愛関係自体は禁止されていません。問題となるのは恋愛感情を「悪用」して客に不当な負担をかける行為です。違反すると営業停止や許可取り消しなどの行政処分を受ける可能性があります。
Q3. 無許可営業と名義貸しの違いは何ですか?2025年改正でどう変わりましたか?
A. 両方とも重大な風営法違反ですが、罰則が劇的に強化されました。
無許可営業と名義貸しの違いと改正後の罰則:
- 無許可営業:風俗営業許可を全く取得せずに営業
- 名義貸し:他人名義の許可証を使用して営業
- 改正後の個人への処罰:5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金
- 改正後の法人への処罰:最大3億円の罰金
改正前は個人で最大200万円だった罰金が1,000万円に、法人は200万円から3億円へと大幅に引き上げられています。これは高額な売上を上げるホストクラブなどを意識した改正です。必ず自身の名義で適正に許可を取得することが重要です。
Q4. 18歳未満の客の年齢確認はどの程度まで行えばよいですか?
A. 確実な身分証明書による確認と記録の保持が必要です。
年齢確認の具体的方法は、以下が挙げられます。
- 公的身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等)の確認
- 学生証や社員証は補助的資料として活用
- 確認した日時と方法の記録保持
- 疑わしい場合は入店を断る勇気
年齢確認を怠り18歳未満を入店させると「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金」と「営業停止」処分を受ける可能性があります。偽造身分証の可能性もあるため、複数の確認方法を組み合わせることをおすすめします。
Q5. 従業員名簿で特に注意すべき点は何ですか?
A. 正確な記載と定期的な更新、そして必要書類の適切な保管が最重要です。
特に外国人従業員については、ビザの期限切れや資格外活動に該当しないか定期的な確認が必要です。また、従業員名簿は警察の立入検査時に必ずチェックされるため、常に最新状態を維持し、店舗に原本を保管しておくことが重要です。
Q6. 店舗の構造変更で届出が必要なのはどの程度の変更からですか?
A. 風営法で定められた構造・設備基準に影響する変更はすべて事前届出が必要です。
届出が必要な変更例:
- 客室の面積変更(壁の移動、部屋の統合・分割)
- 照明設備の変更(照度基準に関わる場合)
- 音響設備の大幅な変更
- 客席配置の大幅な変更
「軽微な変更だから大丈夫」という自己判断は非常に危険で、無届け変更により許可取り消し処分を受ける可能性があります。変更前に必ず管轄警察署の生活安全課に相談し、届出の要否を確認することが重要です。また、内装業者も風営法に詳しい業者を選ぶことをおすすめします。
まとめ
今回はホストクラブの風営法に関して、2025年改正の最新情報を踏まえて以下の内容を紹介してきました。
- 2025年改正風営法の重要な変更点
- ホストクラブの「風俗営業」のルール
- ホストクラブで風営法違反した場合の罰則
- ホストクラブで風営法違反になりやすい具体的ケース
「風営法はよくわからない」とお思いのオーナー様は多いかと思いますが、本記事で見てきたように、2025年改正により風営法に関わる罰則は従来より格段に重くなりました。
特に無許可営業の罰金は法人で最大3億円、色恋営業も明確に規制対象となるなど、従来のグレーゾーンが一掃されています。
しかも「知らなかった」で済まされる世界ではありませんので、常日頃から風営法違反にならないよう、気をつけて営業を行う必要があります。
ぜひ今回紹介した代表的な違反事例だけでも参考にし、2025年改正風営法に対応した健全な営業を心がけてみてください。