目次
本記事をご覧の方は、以下のような疑問をお持ちではありませんか?
- 外国人のキャストを雇用してみたいけど、風営法的にOKなの?
- 外国人雇用の手続きや注意点を詳しく知りたい
近年の訪日外国人観光客の増加に伴い、英語や中国語に対応できる外国人キャストの採用を検討する水商売経営者が増えています。
しかし、違法な外国人雇用は、営業停止処分や刑事罰の対象となるため、適切な知識をもとにした慎重な判断が必要。
本記事では、水商売経営者の皆様に向けて、外国人スタッフ雇用に関する法的規定と実務上の注意点について詳しく解説します。
- キャバクラ・ガールズバー・スナックでの外国人雇用のルール
- 雇用時に必要な手続き
- 違法雇用のリスク
適法な外国人雇用により、店舗の国際化とサービス向上を実現するために、ぜひ最後までご覧ください。
キャバクラでの外国人雇用のルール
キャバクラは風俗営業法第2条第1項第1号に規定される風俗営業に該当するため、外国人の雇用には最も厳格な制限が設けられています。
キャバクラで雇用可能な外国人の在留資格
キャバクラは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項第1号に規定される風俗営業に該当するため、外国人の雇用には最も厳格な制限が設けられています。
出入国管理及び難民認定法により、風俗営業での就労が認められているのは、身分に基づく在留資格を持つ外国人のみです。
具体的には、日本での永続的な居住が認められ、就労に関する制限がない以下の在留資格が該当します。
- 特別永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらの在留資格を持つ外国人は、日本人と同等の就労権利を有しており、業種や職種に関する制限がありません。
一方で、技術・人文知識・国際業務ビザや留学ビザなどの就労系・非就労系在留資格では、資格外活動許可があってもキャバクラでの就労は法的に不可能です。
キャバクラの外国人雇用制限が厳しい理由
この厳格な制限の背景には、以下の理由が挙げられます。
- 外国人の人身取引防止
- 風俗営業の健全化促進、
- 国際的な批判を避けるための政策的配慮
キャバクラにおける接待行為(お客様の隣に座る、お酌をする、会話を楽しむ等)は、出入国管理法の観点から特に慎重な取り扱いが求められているのです。
この規定により、日本語学校に通う留学生や技能実習生、ワーキングホリデービザ保持者などは、どのような条件があってもキャバクラでの就労は一切認められません。
違反した場合は、雇用主に対して不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が適用される可能性があります。
ガールズバー・スナックでの外国人雇用のルール
接待行為を行わない深夜酒類提供飲食店(ガールズバー・スナック等)では、キャバクラよりも緩やかな条件で外国人雇用が可能です。
雇用可能な在留資格の種類
接待行為を行わない深夜酒類提供飲食店では、出入国管理及び難民認定法に基づき、キャバクラよりも幅広い在留資格の外国人雇用が可能です。これは、接待行為を伴わない飲食サービスが、風俗営業法の適用外となるためです。
身分に基づく在留資格(特別永住者、日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者等、定住者)については、キャバクラと同様に制限なく雇用可能。
さらに重要なのは、資格外活動許可を受けた留学生や家族滞在者も、一定の条件下で雇用できる点です。
- 特別永住者、日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者等、定住者(就労制限なし)
- 資格外活動許可を受けた留学生(週28時間以内の制限あり)
- 資格外活動許可を受けた家族滞在者(週28時間以内の制限あり)
ただし、資格外活動許可があっても、風俗営業に該当する業務(接待行為)は禁止されています。
ガールズバーやスナックであっても、お客様の隣に座る、特定の客への特別なサービス等は「接待」とみなされる可能性があるため、カウンター越しでのサービス提供に徹することが重要です。
「資格外活動許可」の労働制限
資格外活動許可は、本来就労が認められていない在留資格の外国人が、例外的に一定の条件下で働くことを認める制度です。出入国管理及び難民認定法第19条に基づき、法務大臣の許可により付与されます。
留学生の場合、本来の在留目的は学業であるため、アルバイトは補助的な活動として位置づけられています。そのため、週28時間という厳格な労働時間制限が設けられており、この制限を超えた就労は違法行為となります。
長期休暇期間中(夏休み、冬休み等)は例外的に1日8時間以内の就労が認められますが、それでも週の合計時間数には注意が必要です。
家族滞在の在留資格を持つ外国人(就労ビザ保持者の配偶者や子ども等)についても、同様に週28時間以内の制限があります。これらの制限に違反した場合、外国人本人は不法就労として処罰され、雇用主は不法就労助長罪に問われる可能性があります。
重要なのは、複数の職場で働いている場合は合計労働時間で判断される点です。他の職場での労働時間も含めて週28時間以内に収める必要があるため、雇用時には他での就労状況も確認が必要です。
水商売で外国人を雇用する際の手続き
外国人を適法に雇用するためには、雇用前の確認から雇用後の管理まで、包括的な体制整備が必要です。
①雇用前の必須確認事項
外国人を適法に雇用するためには、出入国管理及び難民認定法第19条の2に基づく確認義務を履行する必要があります。これは単なる書類確認ではなく、違法就労防止のための法的義務です。
在留カード・パスポートの確認で重要なのは、単に書類を見るだけでなく、真正性の確認も行うことです。近年、偽造された在留カードによる不法就労事案が増加しており、ICチップ読み取りによる確認や、出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションの活用が推奨されています。
確認必須項目としては、以下の点が挙げられるでしょう。
- 在留資格の種類(技術・人文知識・国際業務、留学、家族滞在等)
- 在留期限の確認
- 資格外活動許可の有無と労働時間制限
- 顔写真と本人の同一性確認在
留期限が近い場合は、更新手続きの状況も事前に確認し、期限切れによる不法滞在を防ぐ必要があります。
労働条件の明確化については、特に資格外活動許可を受けた外国人の場合、週28時間という労働時間制限を厳格に遵守する体制を整えることも忘れず。
勤務シフトの作成時から労働時間管理を徹底し、他の職場での就労状況も把握して、合計労働時間が制限を超えないよう管理することが重要です。
②雇用後の管理
外国人雇用は、雇用開始後の継続的な管理が厚生労働省の指針により求められています。
具体的には、従業員名簿や労働時間などをしっかり管理する必要があります。
添付書類として、パスポートのコピー(顔写真・個人情報ページ)、在留カードの表裏コピー、資格外活動許可書のコピーを保管し、これらの書類は雇用期間中および雇用終了後3年間の保存が法的に義務づけられています。
労働時間管理については、資格外活動許可を受けた外国人の週28時間制限を厳格に管理することが必要。タイムカードやシフト表により詳細な労働時間記録を作成し、週単位での集計を継続的に行いましょう。
複数の職場で働いている場合の合計労働時間管理も重要で、定期的に他での就労状況を確認し、制限超過を防ぐ体制を整える必要があります。
【テンプレあり】風営法での従業員名簿の書き方は?罰則を受けないための管理方法
外国人雇用で必要な届出義務
外国人雇用には、日本人雇用にはない特別な届出義務があります。
- 「外国人雇用状況届出書」を提出する
- 社会保険を適用する
①「外国人雇用状況届出書」を提出する
外国人労働者を雇用する事業主には、厚生労働省の外国人雇用状況届出制度により、ハローワークへの届出義務があります。
この届出は、雇用保険に加入する外国人労働者が対象となります。具体的には、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある外国人については、国籍や在留資格に関係なく届出が必要です。
ただし、特別永住者と外交官等は届出対象外となっています。これは、特別永住者が日本人と同等の扱いを受けることが理由です。
②社会保険を適用する
外国人労働者への社会保険適用は、日本人と全く同じ基準で判断されます。在留資格や労働時間により、適用要件を満たせば加入義務があります。
労災保険は雇用形態に関係なく、雇用された外国人労働者は全て対象です。雇用保険は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に適用されます。
社会保険料負担を理由とした外国人雇用の回避は法的に許されません。適用要件を満たす限り、必ず加入させる義務があります。
外国人の違法雇用のリスク・処罰
外国人の違法雇用は、重大な法的リスクを伴います。
①不法就労助長罪による処罰
外国人の違法雇用は、出入国管理及び難民認定法第73条の2に規定される不法就労助長罪という重い刑事罰の対象となります。
この罪の特徴は、雇用主の故意・過失を問わず適用される点です。
つまり「知らなかった」「本人が大丈夫と言った」という弁明は法的に通用しません。
経営者には外国人の就労資格を確認する義務があり、その怠慢は犯罪行為とみなされます。
不法就労助長罪が適用される代表的なケースには以下があります。
- 在留資格のない外国人を雇用(オーバーステイ、不法入国者等)
- 就労が認められていない外国人を雇用(短期滞在、観光ビザ等)
- 認められた範囲を超えて雇用(留学生の週28時間超労働等)
処罰内容は3年以下の懲役または300万円以下の罰金で、さらに両罰規定により法人も300万円以下の罰金刑となります。近年の摘発事例では、人手不足を理由とした違法雇用でも容赦なく処罰されており、一度の違反で事業継続が困難になるリスクがあります。
②風営法による処分
風俗営業許可を受けた店舗での違法外国人雇用は、刑事罰とは別に風営法による行政処分も受けることになります。
営業停止処分では、違反の程度により数日から数ヶ月間の営業が禁止されます。初回違反でも最低1週間程度の営業停止は避けられず、売上への直接的な打撃となります。
さらに重大な違反の場合は許可取消処分となり、事実上の廃業を余儀なくされます。許可取消から5年間は新たな風俗営業許可を取得できないため、同一業界での事業継続は不可能となります。
一度の違法外国人雇用により、長年築いた事業基盤を失うリスクがあるため、確実な法的確認が不可欠です。
【2025年改正版】風営法で違反になる行為と罰則は?摘発されないために
外国人雇用に関するよくある質問
外国人雇用に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 留学生を週28時間以内でキャバクラで働かせることは可能ですか?
A. いいえ、不可能です。
キャバクラは風俗営業であり、資格外活動許可があっても留学生の就労は法的に禁止されています。
必ず身分に基づく在留資格(永住者、日本人の配偶者等)を持つ外国人のみ雇用してください。
Q. 在留カードを持参していない外国人から「後日持参する」と言われた場合は?
A. 在留カード確認前の就労開始は避けてください。
在留資格・労働制限の確認ができない状態での雇用は、違法就労助長のリスクがあります。必ず確認後に雇用を開始しましょう。
Q. 外国人スタッフが他の店舗でも働いている場合の注意点は?
A. 合計労働時間が週28時間を超えないよう管理が必要です。
他店での労働時間を含めて週28時間以内に収まるよう、事前に確認し、継続的に管理してください。
Q. 在留期限が近い外国人を雇用する場合の注意点は?
A. 更新手続きの状況確認と、期限切れ前の再確認が重要です。
在留期限切れによる不法滞在者の雇用は重大な違法行為となるため、定期的な期限確認と更新状況の把握を徹底してください。
まとめ
外国人スタッフの雇用は、適切な法的知識と厳格な管理体制があれば、店舗の競争力向上に寄与する有効な選択肢となります。
しかし、風営法と出入国管理法の複雑な規定により、違法雇用のリスクが高いことも事実です。
- 業態に応じた雇用可能な在留資格の正確な理解
- 雇用前の書類確認と雇用後の継続管理
- 労働時間制限の厳格な遵守
- 違法雇用リスクを上回るメリットがあるかの慎重な判断
不明な点がある場合は、専門家への相談や所轄警察署への事前確認を行い、確実に適法な雇用を実施することが重要です。
外国人雇用により店舗の魅力向上を図る場合は、法的リスクを十分に理解した上で慎重に検討してください。