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キャバクラを経営している方の中に、以下のような疑問やお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
- キャストをどのような雇用形態で雇えばいいのか分からない
- キャバクラのキャストは労働者?それとも個人事業主?
飲食店などのような一般的なアルバイトと違い、キャバクラは特殊な業界です。また、雇用形態に関しては様々な情報があり、どの雇用形態が適しているのか分からないという方が多いのも当然のことです。
そこで本記事では、キャバクラキャストの雇用形態について、以下の内容を詳しく解説していきます。
- 労働者と個人事業主の判断基準
- よくある法律違反のパターンと対策
- 労働基準法違反時のリスクと予防方法
最初に結論から申しますと、キャバクラのキャストの雇用形態(労働者・個人事業主)は一律に決まっていません。なぜなら、キャストの働き方によって雇用形態が変わるからです。
読後は適切な雇用形態の判断ができ、法的リスクを回避した安全な店舗運営ができるようになるはずですので、キャバクラ経営者の方はぜひ参考にしてみてください。
【労働基準法】キャバクラキャストの2つの雇用形態とは
キャバクラのキャストの雇用形態は2つあります。雇用形態が2つあるため、どの雇用形態のキャストに労働基準法がどのように適用されるのかが不明確であり、不明確だからこそ問題や疑問が生まれます。
ここでは下記の2つの雇用形態によるキャストの違いについて説明していきます。
- 労働者としてのキャスト
- 個人事業主としてのキャスト
①労働者としてのキャストとは?
下記の項目のどれか1つにでも当てはまれば、そのキャストは労働者です。個人事業主ではありません。
- 給料が時給制
- 出勤日・出勤時間が決まっている
- スタッフに営業の指示を受けている
- 制服やドレスコードが指定されている
- 店舗が決めたルールに従って業務を行う
多くのキャストがこの項目に当てはまるのではないでしょうか?一般的なアルバイトと同じですね。
この労働者としてのキャストには労働基準法が適用されます。キャストの給与は、「時給+バック−源泉徴収」となります。
個人事業主としてのキャストとは?
下記の項目に当てはまるのが個人事業主のキャストです。
- 出勤日・出勤時間が決まっていない(自由に出勤している)
- 報酬が時給制ではなく、売り上げの何%分が支払われる
- 営業方法や接客スタイルを完全に自分で決められる
- 店舗からの業務指示がほとんどない
- 自分で顧客管理を行っている
法律の解釈のやり方によって多少異なることはありますが、この項目に当てはまるキャストは個人事業主です。つまり、営業を完全にキャストに任せていて完全歩合制なのが個人事業主です。
個人事業主のキャストには労働基準法は適用されません。給与は、「キャストの売り上げの折半」、または「キャストが作った売上の何%」となります。
労働者か?個人事業主か?キャバクラのキャストの適した雇用形態
キャバクラのキャストは労働者か個人事業主か、どちらの雇用形態が適切なのでしょうか?
適切な雇用形態はキャストによって変わります。それらを踏まえた上で、雇用形態を判断するためのポイントを解説していきます。
①雇用形態はキャストの売上によって変わる
キャバクラで働いているほとんどのキャストは労働者の場合が多いです。逆に個人事業主のキャストは1割程度が普通です。
この雇用形態の違いは何なのでしょうか?それは、キャストがどれだけ売上に貢献できるかです。
例えば、以下のようなキャストは個人事業主として雇用します。
- もともとキャバクラで働いた経験があり、自分のお客をたくさん抱えているキャスト
- 違うお店から引き抜いた人気のキャスト
- 月間売上が安定して高いベテランキャスト
高い売上を出せるキャストは、時給制よりも売り上げの折半をする方がより多くのお金を稼ぐことができます。時給制でなく売上の折半制にしてより高い給料を支払う理由は、そのキャストにお店でずっと働いてもらうためです。
人気のあるキャストは、条件の良いお店に移ってしまう可能性があります。よって、人気のあるキャストなど、お店に貢献するキャストは個人事業主として雇い、それ以外の未経験のキャストや、自分のお客をあまり持っていないキャストは労働者として雇用しましょう。
②お店の立地場所によっても違う
雇用形態の違いは、キャストの売り上げの期待値によって変わることを説明しました。これに加えて、お店の立地場所も雇用形態を決める1つの基準になります。
例えば、銀座や六本木のお店は、ほとんどのキャストを個人事業主として雇用しているお店が多いです。なぜなら、他の地域と比べて、銀座や六本木は客単価が高いからです。
自分のお店の客単価が高い地域であれば個人事業主としての雇用を検討し、ある程度普通の客単価の地域にお店がある場合は、労働者としてキャストを雇うようにしましょう。
③体入後の雇用形態はどうなる?
体入後の雇用形態はどうなるのでしょうか?体入時は時給制ですが、入店後のお給料はどうなるのか疑問に思う方がいるかもしれません。
体入後も基本的には時給制です。しかし、体入した子が元々経験があって高い売上を期待できる場合は、入店後には個人事業主として契約することも1つの選択肢です。
個人事業主としての契約はキャストからすると多少リスクのあることです。なぜなら、時給制ではないので売れなければ全く稼げないからです。よって個人事業主として契約する場合はしっかり、キャストと話し合いましょう。
労働者・個人事業主それぞれのキャバクラ側のメリット
それぞれの雇用形態で雇うお店側のメリットについて見ていきましょう。
①労働者として雇うことのメリット
どのキャストも個人事業主として雇うと、全く売り上げをあげられないキャストが出てきます。この場合、そういったキャストは、すぐ辞めてしまう可能性があります。
また、可愛くても未経験のキャストからすると、いきなり完全歩合制はハードルが高く、お店に応募しづらくなってしまいます。
しかし、労働者としての契約であれば、時給制なので出勤さえすれば安定してお金を稼ぐことができます。
- 未経験者でも安心して応募できる
- 安定した人材確保が可能
- 研修や指導がしやすい
- 労務管理がシンプル
よって、キャストの数を増やしたい場合は労働者として雇用することをおすすめします。
②個人事業主として雇うことのメリット
優秀なキャストを個人事業主として雇うことは、結果的にお店側にとっても売り上げが増えることにつながります。
- 優秀なキャストにお店で長く働いてもらうため
- 優秀なキャストを自分のお店で働いてもらえるようにするため
- キャストの税金面の手続きの手間がなくなる
- 高売上キャストのモチベーション向上
その理由は、他のキャストよりも多くお客を持っていて、そのキャストに渡す給与以上の売上を稼いでもらえるからです。
優秀なキャストを時給制の労働者として雇ってもいいのですが、その場合、その優秀なキャストは給料を折半でもらえるお店に移動してしまう可能性が高いです。
また、個人事業主として雇われたキャストは、確定申告など税金面の手続きを自分で行わなければなりません。よってお店はそのキャストの手続きを代わりに行う必要が無くなるのです。
キャバクラでよくある法律違反のキャスト雇用
キャバクラはキャストの雇用形態が2つあることを説明してきました。しかしその複雑さ故に、キャストの雇用における問題が生じる場合があります。
キャバクラ業界では普通だと思っていた雇用方法も、もしかすると違法かもしれません。どのような行為によって問題が生じるのかを確認していきましょう。
①罰金やペナルティは法律違反
遅刻や欠勤でキャストに罰金を課すお店がありますが、それは法律違反です。
給料の減給は認められていますが、減給にも規定があります。
- 1回の減給額が賃金1日分の半分を超えてはならない
- 減給額の総額が1賃金支払い期における総額の10分の1を超えてはならない
(1ヶ月の給料が20万円の場合、2万円を超える減給はしてはいけません)
よって、遅刻や欠勤したキャストにペナルティを課す場合は罰金ではなく減給をしましょう。
②解雇は30日前に予告する
今月中に辞めるキャストに対して、「やる気ないなら明日から来なくていいよ」ということはできません。
解雇は30日前に予告する必要があるからです。また、労働者として働いているキャストはそもそも簡単に解雇することができません。
やむを得ずキャストを解雇する場合は、労働基準法に従った適正な手続きを行いましょう。
③偽装請負のリスク
実態は労働者なのに個人事業主として契約している「偽装請負」は重大な法律違反です。
以下のような場合は偽装請負に該当する可能性があります。
- 時給制なのに個人事業主として契約
- 出勤時間を指定しているのに個人事業主扱い
- 営業指示をしているのに業務委託契約
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
【危険】キャバクラでキャストと業務委託契約はOK?オーナー向けの注意点
キャバクラで労働基準法を違反するとどうなる?
実際に法律違反の雇用をすると、どうなってしまうのでしょうか?キャバクラ業界では雇用におけるトラブルが多いです。
キャバクラのキャストの場合は、辞めても他のお店に行けばいいだけなので、違反をすぐ申告する可能性が高いです。
だからこそ、法律に則った雇用をするようにしましょう。
①キャストに訴訟を起こされる
法律違反の雇用で生じる問題の1つは、キャストが訴訟を起こすことです。
- 未払い残業代請求
- 不当解雇による慰謝料請求
- 労働条件相違による損害賠償
余計な手間を増やすことになりますし、裁判で負ければ賠償金を支払わなければなりません。
②労働組合に報告される
キャバクラなどの水商売専門の労働組合に報告されてしまう場合があります。中には、営業中に大勢でお店に出向き抗議する労働組合があります。
営業中に抗議されてしまうと、「このお店は違反してるんだ」と認知されてしまい、お店にいるお客の信頼を大きく失ってしまいます。
③キャストの信頼を失う
法律違反の雇用をしてしまうとキャストの信頼を失ってしまいます。キャバクラの1番の商品はキャストです。そのキャストの信頼を失ってしまうと利益に大きく影響してしまいます。
キャストが少しでも現状の働き方に不満がある場合は、しっかりコミュニケーションを取って改善しましょう。
キャバクラキャストの雇用に関するよくある質問(Q&A)
キャストの雇用形態について、経営者からよくある質問をまとめました。
Q1. 同じ店舗で労働者と個人事業主のキャストが混在しても問題ありませんか?
A. 問題ありませんが、それぞれの実態に応じた適切な契約が必要です。
重要なのは契約内容と実際の働き方が一致していることです。時給制で出勤時間を指定しているキャストを個人事業主として契約するのは偽装請負にあたり違法です。実態に応じた正しい雇用形態を選択してください。
Q2. 個人事業主のキャストでも最低賃金は保証する必要がありますか?
A. 個人事業主には最低賃金法は適用されませんが、実態が労働者であれば適用されます。
真の個人事業主であれば最低賃金の保証は不要ですが、実態として労働者性が認められる場合は最低賃金法が適用されます。出勤時間の指定や業務指示がある場合は労働者として扱う必要があります。
Q3. キャストの雇用形態を途中で変更することはできますか?
A. 双方の合意があれば変更可能ですが、適切な手続きが必要です。
労働者から個人事業主への変更、またはその逆も可能ですが、キャストの同意と適切な契約変更手続きが必要です。変更時は新しい雇用形態に応じた労働条件の見直しも併せて行いましょう。
Q4. 個人事業主のキャストに対しても労災保険の適用はありますか?
A. 原則として個人事業主には労災保険は適用されません。
個人事業主は労働者ではないため、労災保険の対象外です。ただし、実態として労働者性が認められる場合は労災保険が適用される可能性があります。個人事業主のキャストには別途保険加入を推奨してください。
Q5. 雇用形態を判断する際の最も重要なポイントは何ですか?
A. 業務の指揮命令関係と報酬の支払い形態が最も重要です。
時間や場所、業務内容について具体的な指示を受けて働いている場合は労働者、完全に自分の裁量で営業を行い成果に応じて報酬を得ている場合は個人事業主です。契約書の名称ではなく、実際の働き方で判断されることを理解しておきましょう。
まとめ
本記事では、キャバクラキャストの雇用形態について詳しく解説しました。
キャバクラキャストの雇用形態は複雑ですが、実際の働き方に応じて労働者か個人事業主かを正しく判断することが最も重要です。
ほとんどのキャストは労働者として働いており、その中でも優秀なキャストは個人事業主として契約します。また、客単価が高い地域にお店がある場合は個人事業主として契約することも多いです。
時給制で出勤時間を決めているのに個人事業主としてキャストを契約していると偽装請負になります。法律に則った経営を行うことで、お店を危機に陥れるリスクをなくしましょう。